商標

OS改変による商標権侵害ー脱獄iPhone刑事事件・千葉地裁平成29年5月1日判決

脱獄iPhone事件・千葉地裁平成29年5月1日判決・判時2365号118頁

【事案の概要】

 本件は,被告人がいわゆる脱獄iPhoneをc社の登録商標を付したままの状態で販売し,c社の商標権を侵害した商標法違反と,被告人から脱獄iPhoneを購入した本犯者がオンラインゲーム・○○のクエストをいわゆるチート行為を行ってクリアしたにもかかわらず適正にクリアしたという内容虚偽のデータを○○の運営会社である株式会社dが管理するサーバーコンピュータに送信して記録させたのに先立って,被告人が本犯者にチート行為の手法等を教示してその犯行を容易にしたという私電磁的記録不正作出・同供用幇助に問われた刑事裁判である。いずれも有罪。

【判 旨】

「商標登録に係る指定商品に登録商標が付されたものを商標権者以外の者がその許諾を得ずに譲渡して登録商標を使用した場合,商標権侵害を構成するが(商標法2条3項2号,25条),商標権者又はその許諾を得た者により,適法に商標が付され,かつ,流通に置かれた商品(真正商品)が転々と譲渡される場合には,商標の機能である出所表示機能及び品質保証機能は害されず,商標権者の業務上の信用及び需要者の利益が損なわれることはない。このような場合の真正商品の譲渡による登録商標の使用は実質的な違法性を欠き(最高裁平成15年2月27日第一小法廷判決・民集57巻2号125頁参照),商標権侵害罪は成立しないものと解すべきである。もっとも,本件では被告人が真正商品である△△の内蔵プログラムに商標権者が禁じている改変を加えた上で販売して譲渡していることに留意する必要があり,被告人が販売した内蔵プログラムの改変された△△の品質が真正商品のそれと実質的に差異がなく,商標の出所表示機能及び品質保証機能が害されない場合には実質的違法性を欠くものとして商標権侵害罪は成立しないが,その品質に実質的な差異があり,これらの機能が害される場合には商標権侵害罪が成立するものと解するのが相当である。」

「前記認定のとおり,被告人がAらに販売した脱獄△△のハードウェア自体には特に改変が加えられておらず,真正商品との差異として認めることができるのは,ソフトウェアであるiOSにc社が配信を許可したアプリ以外のアプリをインストールして利用可能にする改変が加えられた点に尽きているこの改変によって品質に実質的な差異が生じ,商標の出所表示機能及び品質保証機能が害されるか否かが商標権侵害の成否を分けるところ,iOSはソフトウェアであり,ハードウェアである△△そのものとは一応別個の存在ということができる。しかし,iOSは△△を作動させるために不可欠の機能を担っている上,△△においてiOS以外のオペレーティングシステムの利用が予定されていないことは公知の事実であり,iOSは△△の不可分かつ一体の構成要素にほかならない。そうすると,iOSの改変は△△の本質的部分の改変に当たるものというべきである。そして,脱獄によって真正商品では利用できないアプリをインストールして利用することが可能となった点は,スマートフォンの活用方法が利用可能なアプリによって大きく左右されることに照らしても,それ自体,△△のスマートフォンとしての機能に重要な変更を加えるものというべきである。しかも,脱獄△△の場合,真正商品であればc社による審査の過程で排除可能なマルウェアが混入したアプリがインストールされて被害を受けるおそれがあり,そのセキュリティレベルは真正商品のそれよりも低い水準にあるものといわざるを得ない。これらの点からすると,脱獄△△は,真正商品の本質的部分に改変が加えられた結果,機能やセキュリティレベルといった品質面で相当な差異が生じているものというべきで,商標の品質保証機能が害されているものといわなければならない。また,c社が禁じているiOSの改変のためにこのような真正商品との品質の差異が生じている脱獄△△の提供主体を同社とみることはできないから,商標の出所表示機能も害されている。
 以上のとおり,被告人がAらに販売した脱獄△△の品質は真正商品のそれとは相当な差異があり,商標の出所表示機能及び品質保証機能が害されているから,その譲渡について実質的違法性が阻却されることはない。したがって,被告人の行為については商標権侵害罪が成立する」
「これに対し,弁護人は,被告人はAらに対する脱獄△△の販売に当たって脱獄済みであることを明示しており,Aらは真正商品に改変が加えられたものであることを知って脱獄△△を購入しているため,Aらに脱獄△△の提供主体がc社であり,同社が保証する品質が確保されているとの誤認は全く生じていなかったから,商標の出所表示機能及び品質保証機能は害されていないと主張する。
 しかしながら,例えば,脱獄によるセキュリティレベルの低下が原因となって脱獄△△に不具合が生じた場合でも,その購入者が不具合の原因を正しく理解できる保証はなく,商標権者であるc社の責任による不具合と認識する可能性があるから,その品質の提供主体を同社と誤認するおそれが否定できない。脱獄△△の販売に当たって脱獄済みであることが明示されており,Aらが真正商品に改変が加えられたものであることを知って購入したからといって,商標の出所表示機能及び品質保証機能が害されないとはいえない。」

 

【コメント】

 iPhoneのOSであるiOSを改変して(通称「脱獄」して),人気ゲームアプリモンスターストライク(通称「モンスト」)でチートができるようにして販売していた人の刑事裁判です。

 私も特に修習生のころ,モンストよくやったなー

1 商標機能論

 商標の機能は,ロゴマークの出所に対する信頼を保護すること(=出所表示機能)でした。判決文にあるとおり,真正商品「が転々と譲渡される場合には,商標の機能である出所表示機能及び品質保証機能は害されず,商標権者の業務上の信用及び需要者の利益が損なわれることはない」ので,「このような場合の真正商品の譲渡による登録商標の使用は実質的な違法性を欠」くことになります。これを,商標機能論,といったりします。

 これを民事の判決で明示したのが,並行輸入品に関するフレッドペリー事件判決でした。

⇒フレッドペリー事件・最高裁平成15年2月27日判決・民集57巻2号125頁

 本判決は,この商標機能論を刑事事件において,プログラムの改変について判示したものです。

⇒Wii事件・名古屋地裁平成25年1月29日判決・裁判所Web

 

2 私電磁的記録不正作出・同供用の幇助罪

 なお,本判決は,被告人から脱獄iPhoneを買った人が「私電磁的記録不正作出・同供用」罪に当たることを前提に,その方法を教示した行為等が,これらの罪の「幇助」罪に当たることも判示しています。

 この点は,民事において,改造メモリーカード販売した行為が著作者人格権侵害(の幇助)にあたるとしたときめきメモリアル事件から,知財の領域ではよくいわれる議論ですね。

ときめきメモリアル事件・最高裁平成13年2月13日判決

Winny事件・最高裁平成23年12月19日判決

 また,改造したソフトを販売していたという点で,クラック版ソフト事件(著作権侵害)と併せて近時の違法ソフト対策に有意な事件といえます。

クラック版ソフト事件・東京地裁平成30年1月30日判決

 

 

 

 

メタタグ,タイトルタグの商標的使用ーバイクリフター事件・大阪地裁平成29年1月19日判決

バイクリフター事件・大阪地裁平成29年1月19日判決・判時2406号52頁

【事案の概要】

 Xは,「バイクリフター」「BIKE LIFTER」の文字列による商標権を有している(第12類,「X商標」という)。

 Yは,次の態様でY標章を使用している。

ア Y商品の販売等
 Yは,平成25年8月から少なくとも平成28年8月まで,Y各標章を付したオートバイ運搬用台車であるY商品を製造し,販売し,又は販売のために展示していた。
 Y商品は,X商標の指定商品である「オートバイを横方向にずらし移動するための台車・その他オートバイの運搬用台車」に含まれる。

イ Yによる宣伝広告
 Yは,少なくとも平成28年8月まで,ホームページ上に,商品名を「バイクシフター」又は「bike shifter」とするY商品の写真を掲載し,商品説明等の文章中において,「バイクシフター」,「bike shifter」の語を使用していた。
 また,Yは,少なくとも平成28年8月まで,YAHOOショッピング,楽天市場,Amazon,ウェビックなどのインターネットショッピングサイトに出店し,Y各標章を付したY商品の写真を掲載し,同商品を販売していた。

ウ YによるX商標又はY標章のメタタグ及びタイトルタグでの使用
 Yは,そのウェブサイト(http://world-walk.com)の html ファイルの<metaname=″keywords″content=>に,<meta name=″keywords″content=″バイクリフター″>と記載し,<meta name=″description″content=>及び<title>において,<meta name=″description″content=″バイクシフター&スタンドムーバー 使い方は動画でご覧下さい″>,<title>バイクシフター &スタンドムーバー</title>と記載している。

 XはYに対し,商標権及び不正競争防止法に基づき差止及び損害賠償を請求した。一部認容。

【判 旨】

判決は,商標の類似性,商品の類似性を肯定した上で,メタタグ,タイトルタグでの使用(上記ウ)について次の通り判示した。

ディスクリプションメタタグ,タイトルタグでの使用について

「Yのウェブサイトの html ファイル上の前記前提事実…記載のコードのうち,「<meta name=″description″content=″バイクシフター&スタンドムーバー使い方は動画でご覧下さい″>」との記載は,いわゆるディスクリプションメタタグ,「<title>バイクシフター &スタンドムーバー</title>」との記載はいわゆるタイトルタグであり,これらを記載した結果,ヤフー等の検索サイトにおいてキーワード検索結果が表示されるページ上に,Yのホームページについて,上記タイトルタグのとおりのタイトルが表示され,上記ディスクリプションメタタグのとおりの説明が表示されると認められる(弁論の全趣旨)。
 ところで,一般に事業者がその商品又は役務に関してインターネット上にウェブサイトを開設した際のページの表示は,その商品又は役務に関する広告であるということができるから,インターネットの検索サイトの検索結果画面において表示される当該ページの説明についても,同様に,その商品又は役務に関する広告であるというべきである。そして,これが表示されるように html ファイルにディスクリプションメタタグないしタイトルタグを記載することは,商品又は役務に関するウェブサイトが検索サイトの検索にヒットした場合に,その検索結果画面にそれらのディスクリプションメタタグないしタイトルタグを表示させ,ユーザーにそれらを視認させるに至るものであるから,商標法2条3項8号所定の商品又は役務に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する使用行為に当たるというべきである。また,上記のディスクリプションメタタグないしタイトルタグとしてのY標章1の使用は,それにより当該サイトで取り扱われているY商品の出所を表示するものであるから,Y商品についての商標的使用に当たるというべきである。」

キーワードメタタグでの使用について

「Yのウェブサイトの html ファイル上の前記前提事実(4)ウ記載のコードのうち,「<meta name=″keywords″content=″バイクリフター″>」との記載は,いわゆるキーワードメタタグであり,ユーザーが,ヤフー等の検索サイトにおいて,検索ワードとして「バイクリフター」を入力して検索を実行した際に,Yのウェブサイトを検索結果としてヒットさせて,上記(1)のディスクリプションメタタグ及びキーワードタグの内容を検索結果画面に表示させる機能を有するものであると認められる。このようにキーワードメタタグは,Yのウェブサイトを検索結果としてヒットさせる機能を有するにすぎず,ブラウザの表示からソース機能をクリックするなど,需要者が意識的に所定の操作をして初めて視認されるものであり,これら操作がない場合には,検索結果の表示画面のYのウェブサイトの欄にそのキーワードが表示されることはない。(弁論の全趣旨)
 ところで,商標法は,商標の出所識別機能に基づき,その保護により商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図ることを目的の一つとしている(商標法1条)ところ,商標による出所識別は,需要者が当該商標を知覚によって認識することを通じて行われるものである。したがって,その保護・禁止の対象とする商標法2条3項所定の「使用」も,このような知覚による認識が行われる態様での使用行為を規定したものと解するのが相当であり,同項8号所定の「商品…に関する広告…を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」というのも,同号の「広告…に標章を付して展示し,若しくは頒布し」と同様に,広告の内容自体においてその標章が知覚により認識し得ることを要すると解するのが相当である。
 そうすると,本件でのキーワードメタタグにおけるX商標の使用は,表示される検索結果たるYのウェブサイトの広告の内容自体において,X商標が知覚により認識される態様で使用されているものではないから,商標法2条3項8号所定の使用行為に当たらないというべきである。」

 

【コメント】

1 まず,メタタグ,タイトルタグとは??

メタタグ:ウェブサイトに関する様々な情報を検索エンジンに提供するためのhtmlコード。

ディスクリプションメタタグ:検索エンジンの検索結果として表示される。

キーワードメタタグ:検索結果の表示順位を決める際に参照されることがある(検索画面には表示されない)

タイトルタグ:検索結果画面にタイトルとして表示される部分。

 つまり,ディスクリプションメタタグとタイトルタグは表示されますが,キーワードメタタグはわざわざソースコードを開かなければ(一般の人には)表示されません。

2 商標的使用論

 商標は,そのロゴマーク(業界では「標章」といいます。)の出所を表示してその信頼を保護することを目的としています。例えば,「SONY」の表示があることで,需要者は「あ,SONYの製品だからいい品質の商品い違いない!」という信頼を得るわけです。これを,商標の出所表示機能といいます。このような需要者の信頼を裏切るようなパクリ商品を販売させないことが,商標法で認められる主な権利になるわけです。

 逆に,このような需要者の信頼を裏切らない=商標的使用ではない使用であれば,商標を使ってもいいことになります(登録商標は何でもかんでも使ってはいけない,というものではありません)。例えばヨドバシカメラの袋には「SONY」のロゴがありますが,これは誰もその紙袋が「SONY」製品だと思わない,包装としての使用だからOKということです。

3 メタタグ,タイトルタグ

 そのような商標的使用論,最近はウェブサイトに関して問題となることも多いです。特に,広告関係ですね。

 本件で問題となったディスクリプションメタタグ,タイトルタグでの使用については,従来から裁判例がありました。

⇒中古車の110番事件・大阪地裁平成17年12月8日判決・判時1934号109頁。

⇒IKEA事件・東京地裁平成27年1月29日判決・判時2249号86頁。

 本判決は,キーワードメタタグでの使用が,需要者に表示されない点で,商標的使用ではない=使用してOKという点で新しい判決です。

マリカー事件・東京地裁平成30年9月27日判決

東京地裁平成30年9月27日判決

(1)事案の概要

 任天堂株式会社(以下「X社」といいます。)は,「平成4年8月27日,ゲーム機種スーパーファミコン用のゲームソフトとして「スーパーマリオカート」を発売し,平成26年5月29日までの間に,合計8本の「マリオカート」シリーズのゲームソフトを販売した。」Y社[1]は,「設立時である平成27年6月4日から,少なくとも平成28年6月23日まで間,MariCAR」との屋号を用いて,公道を走行することが可能なカート…のレンタルとそれに付随する事業…を営んでいた。」Y社はレンタル事業に関するチラシに「『マリカーは,普通免許で運転できる一人乗りの公道カートのレンタル&ツアーサービスです。』」等と記載した。また,「『マリオ』,『ルイージ』,『ヨッシー』,『クッパ』等のコスチュームを着用した従業員が公道カートに乗車して利用者を先導することより,ガイドを勤めていた」り,店舗内入り口付近に「身長120㎝ほどの『マリオ』の人形」が設置されたりした。

 X社はY社に対し,不正競争防止法及び著作権侵害に基づき,差止めと損害賠償を請求した。差止の一部と損害賠償の全額(1000万円)を認容。

(2)判決要旨

「『マリカー』は,①ゲームソフト『マリオカート』の略称として,遅くとも平成8年頃には,ゲーム雑誌において使用されていて…,②少なくとも平成22年頃には,ゲームとは関係性の薄い漫画作品においても何らの注釈を付することなく使用されることがあったこと…,③Y社が設立される前日である平成27年6月3日には,その一日をとってみても,『マリオカート』を『マリカー』との略称で表現するツイートが600以上投稿されたこと…が認められる。また,Y社の設立後においても,テレビ番組においてタレントが,子供の頃から原告のゲームシリーズである『マリオカート』の略称として『マリカー』を使用していたと発言し…,本件訴訟提起に係る報道が出された後には,複数の一般人から,Y社の社名である『マリカー』が原告のゲームシリーズ『マリオカート』を意味するにもかかわらず,Y社が原告から許可を得ていなかったことに驚く内容の投稿がされた事実が認められる…。」

「これらの事実からすると,…マリカーは,広く知られていたゲームシリーズである『マリオカート』を意味する原告の商品等表示として,…遅くとも平成22年頃には,日本全国のゲームに関心を有する者の間で,広く知られていたということができる。」

Y社は,『マリカー』の標準文字からなる本件商標を有しており,『マリカー』という標章を使用する正当な権限を有するから,不競法3条1項に基づく差止請求は認められない旨主張する。しかしながら,Y社が本件商標の登録を出願したのは平成27年5月13日であるところ…その5年程度前である平成22年頃には,既に原告文字表示マリカーは原告の商品を識別するものとして需要者の間に広く知られていたということができる。…原告に対して,Y社が本件商標に係る権利を有すると主張することは権利の濫用として許されないというべきである。」

(3)解説と考察

判決文中にもあるように,「マリカー」はY社の商標として商標登録されており,任天堂は商標登録を阻止できませんでした[2]しかし,Y社が「マリカー」を使用してカートのレンタル事業を営む一定の行為は,不正競争防止法により阻止されました。その意味するところは,商標法と不正競争防止法とは法律の目的が絶妙に異なり,適用範囲も絶妙に違う,ということです。これが本判決の到達点です。

 フランク三浦の商標登録を阻止できなかったフランクミュラーは,不正競争防止法で「フランク三浦」の時計販売を差止められるかもしれません。

フランク三浦事件知財高裁判決・知財高裁平成28年4月12日判決

[1] 「平成27年6月4日の設立時から平成30年3月21日まで,「株式会社マリカー」との商号を用いていたが,同月22日付けで,その商号を「株式会社MARIモビリティ開発」に変更した」

[2] 特許庁・異議2016-900309

ヤフオク!におけるクラック版ソフトの出品と著作権侵害・東京地裁平成30年1月30日判決

東京地裁平成30年1月30日判決・裁判所Web・ジュリ1521号8頁
(1)事案の概要
Xは「建築CADソフトウェア「DRA-CAD11」(以下「本件ソフトウェア」といいます。)について著作権及び著作者人格権を有し,また「DRA-CAD」の商標権を有している。Yは,Xの許諾なしに本件ソフトウェアをダウンロード販売すると共に,本件ソフトウェアのアクティベーション機能 を回避するプログラム を顧客に提供していた。XはYに対し,著作権及び著作者人格権の侵害,商標権の侵害,不正競争防止法を根拠に,損害賠償金2812万9500円の一部である1000万円等の支払を求めた。請求一部認容(969万5700円)。

(2)判決要旨
「上記事実によれば,①Yは,ヤフオクにおいて,あくまで「DRA-CAD11」建築設計・製図CAD自体をオークションの対象物と表示して出品しており,「商品説明」欄には「DRA-CAD11」,「注意事項」欄には「ダウンロード品同等」「インストール完了までフルサポートさせて頂きます」,「発送詳細」欄には「ダウロード販売」と記載されていたこと,②かかる表示を見てオークションに入札した顧客も,当然,本件ソフトウェアを安価に入手する意図で入札を行ったと推認できること,③Yは,顧客に対し,本件ソフトウェア及びそのアクティべーション機能を担うプログラムのクラック版(いずれもXの無許諾)のダウンロード先をあえて教示し,かつこれらの起動・実行方法を教示するマニュアル書面を提供し,その結果,顧客が,本件ソフトウェア(無許諾品)を入手した上,本件ソフトウェアで要求されるアクティベーションを回避してこれを実行することができるという結果をもたらしており,Yの上記行為は,かかる結果を発生させるのに不可欠なものであったこと,④Yは,営利目的でかかる行為を行い,…多額の利益を得ていること,以上の事実が認められる。」「これらの事情を総合すれば,上記…の一連の経過により,Yは,本件ソフトウェアの一部にXの許諾なく改変(アクティベーション機能の回避)を加え…,同改変後のものをダウンロード販売したものと評価できるから,Yは,Xの著作権…並びに著作者人格権…権)を侵害したものと評価すべきであり,これに反するYの主張は採用できない。」

(3)コメント
 ソフトウェアには著作権があり,ソフトウェアの販売とはつまるところ著作権のライセンス契約になります。オークションサイトには多数ソフトウェアが出品されており,出品形態もいろいろ です。中には「これ違法じゃないかな?」という出品もあり,本件で見たように違法な場合もあります。
 本判決の意義は,著作権を侵害しているのは(買った人ではなく)ソフトウェアを出品している販売業者だと認定したことです。すなわち,「シリアルナンバー入力を回避しているのは買った人なんだから,うちは関係ありません」という言い訳が立たないことを示したのです。

 この点は,近時のまねきTV事件との関係が注目されます。ばかりか,個人的には,(少し古いですが)ときめきメモリアル事件とも対比検討が熱い事件だと考えています。

⇒まねきTV事件・最高裁平成23年1月18日判決

ときめきメモリアル事件・最高裁平成13年2月13日判決

令和元年10月1日追記

ソフトウェアの改変に関する商標権侵害について,脱獄iPhone事件参照。

脱獄iPhone刑事事件・千葉地裁平成29年5月1日判決

フランク三浦事件・知財高裁平成28年4月12日判決

知財高裁平成28年4月12日判決
(1)事案の概要
 高級時計であるフランク・ミュラーを販売する「エフエムティーエム ディストリービューション リミテッド」(以下「フランク・ミュラー側」といいます。)が,『フランク三浦』の登録商標を持つ株式会社ディンクス(以下「フランク三浦側」といいます。)に対し,『フランク三浦』は引用商標『フランク ミュラー』『FRANCK MULLER』等に類似していること等を理由に,本件商標『フランク三浦』の無効審判を求めた(以下,二重括弧内は商標を表します)。
 第一審に相当する特許庁は,『フランク三浦』は『フランク ミュラー』等と称呼・観念において類似すること,両者が誤認混同を生ずること等を理由として,本件商標『フランク三浦』の無効審判をした。
 これに対し,フランク三浦側は当該無効審判の取り消しを求めて,第二審に相当する知財高裁に提訴したのが本件である。
(2)判決要旨
ア 本件商標と引用商標の類否について
 『フランク三浦』と『フランク ミュラー』は,称呼において類似するが,両者は「その外観において明確に区別し得る。」『フランク三浦』からは「日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対し,」『フランク ミュラー』「からは,外国の高級ブランドである被告商品の観念が生じるから,両者は観念において大きく相違する。」
 同様に,『フランク三浦』と『FRANCK MULLER』の「称呼は類似するものの,観念においては大きく相違する。そして,…その外観において明確に識別し得る。」
イ 検討
フランク・ミュラー側「使用商標は, 外国ブランドである被告商品を示すものとして周知であり,本件商標の指定商品は被告商品と,その性質,用途,目的において関連し,本件商標の指定商品と被告商品とでは,商品の取引者及び需要者は共通するものである。しかしながら,他方で,本件商標と被告使用商標とは,生じる称呼は類似するものの,外観及び観念が相違し,かつ,…本件商標の指定商品において,称呼のみによって商標を識別し,商品の出所を判別するものとはいえないものである。かえって,…指定商品のうちの「時計」については,商品の出所を識別するに当たり,商標の外観及び観念も重視されるものと認められ,その余の指定商品についても,時計と性質,用途,目的において関連するのであるから,これと異なるものではない。…本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準としても,本件商標を上記指定商品に使用したときに,当該商品が被告又は被告と一定の緊密な営業上の関係若しくは被告と同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるとはいえないというべきである。」

(3)コメント
 商標(ロゴマーク)が類似しているか否かは,外観,称呼,観念の3点を総合考慮して決せられます。この点,『フランク三浦』と『フランク ミュラー』ないし『FRANCK MULLER』とは,似ていないし,消費者が販売元等を誤認混同するおそれはない,という指摘は判決のとおりでしょう。

 ただ,『フランク三浦』の時計はフランク ミュラーのいわゆるパロディ商品でしょう。フランク ミュラー側は,『フランク三浦』が『フランク ミュラー』にフリーライド(タダ乗り)している,と主張してきました。しかし,このフリーライドの問題は,商標法上の類似問題とは切り離して考える,というのが本判決の考えです。
 

 ところで,最近ですとコメダ珈琲事件で東京地裁がコメダ珈琲のブランドイメージを重視して,不正競争防止法に基づく差止めを認めました。

コメダ珈琲事件

 フランク ミュラー側は今後,不正競争防止法で勝負する可能性があるでしょう。

※この論点について,判決が出ました(平成30年11月19日追記)

マリカー事件・東京地裁平成30年9月27日判決