2019年9月

中野信子『キレる!』

【本の紹介】

中野信子『キレる!』(小学館新書・令和元年)

市井の弁護士をしていると,トラブルに巻き込まれたいろんな人をみます。

相談者は弁護士の法律による解決を求めてきますが,世の中法律で割り切れないこともたくさんあります。

中野先生の著書は,社会で起きるトラブルを,脳科学や心理学の観点からわかりやすく説明してくれるものが多く,弁護士実務にたいへん参考になるのでよく読んでいます(法律以外の観点からもトラブルの原因がわかる,説明がつくと,安心できます)。

本書も人が「キレる!」現象や効能について,特にホルモンの観点からわかりやすく述べられています。「あー,そういう人いるよねー!」という共感必至。上司からキレられがちな人と,子供が思春期に入りそうな親御さん,必見です

 

「自分の立場を利用して,弱い立場の人を支配したがる人はどこの世界にもいるものです。

…初動がものすごく大事です。相手が監督や上司など,自分より明らかに立場が上だとわかっていても,『ここから先は入ったら困ります』というところを,しっかり示しておかなければならないのです。」(同書74頁から77頁)

本書が一貫して伝える点です。言われっぱなしだと搾取されます。

 

「『ないがしろにされている』という被害者感情

患者に対して精いっぱい,最善の治療を行っているつもりでも,『なぜ先生はそんな治療しかしてくれないのか』とクレームをいう患者…。説得しようとしてもなかなか納得してもらえません。

…特に女性は男性に比べてセロトニンが少なく,不安を感じやすく,さらに女性ホルモンであるエストロゲンは,共感を求める成立があります。

…大切なのは,怒っている相手に安心感を与えるためのポイントを押さえるということです。相手のすべての要求にこたえるために時間を費やす必要はありません。」(同書106頁から108頁)

我々の業界に限っていえば,依頼者にちゃんと連絡をすること,弁護士の意図や見通しをできるだけ伝えること,そして共感を示すことかな,と思っています。報連相,といえば当たり前のことですが。

 

「普段はおとなしいのに,突然攻撃的になる人

…気にいらないことがあっても,本音を言ったら相手が不快に思うのではなかと気にして,自分の意見を言えずに我慢をし,我慢の限界がくると爆発して暴れるタイプの人。

…セロトニントランポーターが中脳の一部で少ない人の特徴で,この人たちは理不尽な扱いや自分が不当な条件で何かされていると認知すると,自分がコストをかけてでも相手に攻撃を仕掛けようとします

…『相手が痛い目にあうのを見たい』という気持ちになりやすい脳です。

…『決してそれは理不尽ではありません』というポーズを見せなくてはいけません。

…どのケースにも言えることですが,キレやすい人がいる場合は,どういうときにキレるのかをよく観察するようにしましょう。…キレるポイントやパターンがあるはずです。」(同書114頁から117頁)

いくらコストをかけても,相手に報復したいという気持ちをもって弁護士のところに訪れる人は,一定数います。法律が認める範囲である限り,それは正当な権利行使なので,それ自体非難されることではありません。

ただ私は

・コスト(弁護士費用)がかかること

・ガキの使いではないので,私は言いなりにはならないこと

は明確に伝えるようにしています。

 

「疑い深く,キレやすい『暴走老人』

年配者が,”怒りっぽくなる,頑固,話を聞かない,疑い深い”というのは脳の老化が原因かもしれません。

…しかしながら,老化による前頭葉の萎縮が起きてしまうことは事実ですが,その萎縮の度合いは個人差があります。90歳近くでもまったく衰えを感じさせない人もいます。その理由として考えられることとしては,脳を鍛えているかどうかです。」(同書119頁から121頁)

私のピアノの先生の話をします。

私は小学校5年生から中3までピアノを習っていました。先生は樺太出身の音楽教師で,シベリアに抑留されて帰ってきた元日本兵(といっても赤紙で招集された二等兵)です。私がピアノを教わっていた時すでに90歳を超えていました

しかし,全く認知症ではありませんでしたし,怒りっぽくもなかったです。先生曰く,「指先を使うピアノはボケ防止にいい」とのことで,一日何時間もピアノを弾いていました。若い生徒達に毎日レッスンで会話をしていたこともよかったんでしょうね。

私自身,おじいちゃんになってもピアノを弾いていたいなと思います。ほんと。

 

「キレやすいポイントを記録する

自分を客観視するためにも,自分がどんなときにキレて何に対して怒りやすいのか,記録をつけてみるとよいでしょう。

自分のキレやすいポイントを可視化することで,自分の怒りの衝動的な行動を”メタ認知”することができます。」(同書129頁から130頁)

この仕事をしていると,どうしても他人の怒りにさらされますし,私自身怒りの感情に支配されそうになることがあります。反面,交渉事は怒った方が負け。怒りをコントロールするためにも,本書のいうように記録をしてみようかと思いました。

その他,オキシトシンの働きについても記載がありますが,前著『シャーデンフロイデ』の方が詳しいです。

メタタグ,タイトルタグの商標的使用ーバイクリフター事件・大阪地裁平成29年1月19日判決

バイクリフター事件・大阪地裁平成29年1月19日判決・判時2406号52頁

【事案の概要】

 Xは,「バイクリフター」「BIKE LIFTER」の文字列による商標権を有している(第12類,「X商標」という)。

 Yは,次の態様でY標章を使用している。

ア Y商品の販売等
 Yは,平成25年8月から少なくとも平成28年8月まで,Y各標章を付したオートバイ運搬用台車であるY商品を製造し,販売し,又は販売のために展示していた。
 Y商品は,X商標の指定商品である「オートバイを横方向にずらし移動するための台車・その他オートバイの運搬用台車」に含まれる。

イ Yによる宣伝広告
 Yは,少なくとも平成28年8月まで,ホームページ上に,商品名を「バイクシフター」又は「bike shifter」とするY商品の写真を掲載し,商品説明等の文章中において,「バイクシフター」,「bike shifter」の語を使用していた。
 また,Yは,少なくとも平成28年8月まで,YAHOOショッピング,楽天市場,Amazon,ウェビックなどのインターネットショッピングサイトに出店し,Y各標章を付したY商品の写真を掲載し,同商品を販売していた。

ウ YによるX商標又はY標章のメタタグ及びタイトルタグでの使用
 Yは,そのウェブサイト(http://world-walk.com)の html ファイルの<metaname=″keywords″content=>に,<meta name=″keywords″content=″バイクリフター″>と記載し,<meta name=″description″content=>及び<title>において,<meta name=″description″content=″バイクシフター&スタンドムーバー 使い方は動画でご覧下さい″>,<title>バイクシフター &スタンドムーバー</title>と記載している。

 XはYに対し,商標権及び不正競争防止法に基づき差止及び損害賠償を請求した。一部認容。

【判 旨】

判決は,商標の類似性,商品の類似性を肯定した上で,メタタグ,タイトルタグでの使用(上記ウ)について次の通り判示した。

ディスクリプションメタタグ,タイトルタグでの使用について

「Yのウェブサイトの html ファイル上の前記前提事実…記載のコードのうち,「<meta name=″description″content=″バイクシフター&スタンドムーバー使い方は動画でご覧下さい″>」との記載は,いわゆるディスクリプションメタタグ,「<title>バイクシフター &スタンドムーバー</title>」との記載はいわゆるタイトルタグであり,これらを記載した結果,ヤフー等の検索サイトにおいてキーワード検索結果が表示されるページ上に,Yのホームページについて,上記タイトルタグのとおりのタイトルが表示され,上記ディスクリプションメタタグのとおりの説明が表示されると認められる(弁論の全趣旨)。
 ところで,一般に事業者がその商品又は役務に関してインターネット上にウェブサイトを開設した際のページの表示は,その商品又は役務に関する広告であるということができるから,インターネットの検索サイトの検索結果画面において表示される当該ページの説明についても,同様に,その商品又は役務に関する広告であるというべきである。そして,これが表示されるように html ファイルにディスクリプションメタタグないしタイトルタグを記載することは,商品又は役務に関するウェブサイトが検索サイトの検索にヒットした場合に,その検索結果画面にそれらのディスクリプションメタタグないしタイトルタグを表示させ,ユーザーにそれらを視認させるに至るものであるから,商標法2条3項8号所定の商品又は役務に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する使用行為に当たるというべきである。また,上記のディスクリプションメタタグないしタイトルタグとしてのY標章1の使用は,それにより当該サイトで取り扱われているY商品の出所を表示するものであるから,Y商品についての商標的使用に当たるというべきである。」

キーワードメタタグでの使用について

「Yのウェブサイトの html ファイル上の前記前提事実(4)ウ記載のコードのうち,「<meta name=″keywords″content=″バイクリフター″>」との記載は,いわゆるキーワードメタタグであり,ユーザーが,ヤフー等の検索サイトにおいて,検索ワードとして「バイクリフター」を入力して検索を実行した際に,Yのウェブサイトを検索結果としてヒットさせて,上記(1)のディスクリプションメタタグ及びキーワードタグの内容を検索結果画面に表示させる機能を有するものであると認められる。このようにキーワードメタタグは,Yのウェブサイトを検索結果としてヒットさせる機能を有するにすぎず,ブラウザの表示からソース機能をクリックするなど,需要者が意識的に所定の操作をして初めて視認されるものであり,これら操作がない場合には,検索結果の表示画面のYのウェブサイトの欄にそのキーワードが表示されることはない。(弁論の全趣旨)
 ところで,商標法は,商標の出所識別機能に基づき,その保護により商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図ることを目的の一つとしている(商標法1条)ところ,商標による出所識別は,需要者が当該商標を知覚によって認識することを通じて行われるものである。したがって,その保護・禁止の対象とする商標法2条3項所定の「使用」も,このような知覚による認識が行われる態様での使用行為を規定したものと解するのが相当であり,同項8号所定の「商品…に関する広告…を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」というのも,同号の「広告…に標章を付して展示し,若しくは頒布し」と同様に,広告の内容自体においてその標章が知覚により認識し得ることを要すると解するのが相当である。
 そうすると,本件でのキーワードメタタグにおけるX商標の使用は,表示される検索結果たるYのウェブサイトの広告の内容自体において,X商標が知覚により認識される態様で使用されているものではないから,商標法2条3項8号所定の使用行為に当たらないというべきである。」

 

【コメント】

1 まず,メタタグ,タイトルタグとは??

メタタグ:ウェブサイトに関する様々な情報を検索エンジンに提供するためのhtmlコード。

ディスクリプションメタタグ:検索エンジンの検索結果として表示される。

キーワードメタタグ:検索結果の表示順位を決める際に参照されることがある(検索画面には表示されない)

タイトルタグ:検索結果画面にタイトルとして表示される部分。

 つまり,ディスクリプションメタタグとタイトルタグは表示されますが,キーワードメタタグはわざわざソースコードを開かなければ(一般の人には)表示されません。

2 商標的使用論

 商標は,そのロゴマーク(業界では「標章」といいます。)の出所を表示してその信頼を保護することを目的としています。例えば,「SONY」の表示があることで,需要者は「あ,SONYの製品だからいい品質の商品い違いない!」という信頼を得るわけです。これを,商標の出所表示機能といいます。このような需要者の信頼を裏切るようなパクリ商品を販売させないことが,商標法で認められる主な権利になるわけです。

 逆に,このような需要者の信頼を裏切らない=商標的使用ではない使用であれば,商標を使ってもいいことになります(登録商標は何でもかんでも使ってはいけない,というものではありません)。例えばヨドバシカメラの袋には「SONY」のロゴがありますが,これは誰もその紙袋が「SONY」製品だと思わない,包装としての使用だからOKということです。

3 メタタグ,タイトルタグ

 そのような商標的使用論,最近はウェブサイトに関して問題となることも多いです。特に,広告関係ですね。

 本件で問題となったディスクリプションメタタグ,タイトルタグでの使用については,従来から裁判例がありました。

⇒中古車の110番事件・大阪地裁平成17年12月8日判決・判時1934号109頁。

⇒IKEA事件・東京地裁平成27年1月29日判決・判時2249号86頁。

 本判決は,キーワードメタタグでの使用が,需要者に表示されない点で,商標的使用ではない=使用してOKという点で新しい判決です。

橘玲『上級国民/下級国民』

【本の紹介】

 

いやぁー,おもしろかったです!

一気に読んでしまいました。以下,ネタバレ注意です。

1 「PART1 『下級国民の誕生』」

平成が『団塊の世代の雇用(正社員の既得権)を守る』ための30年だったとするならば,令和の前半は『団塊の世代の年金を守る』ためのの20年になる以外にありません。」(同書73頁)

「2040年には…現役世代1.5人で高齢世代1人を支えることにな」るとき(同書74頁),現役世代が高齢世代と同様の生活をするためには2000万円必要,というのが金融庁の報告でした。

当然,シルバー民主主義ですから,年金の受給年齢や額を根本的に変えることもできないんでしょう。若年層はがんばって2000万円作らないとです。

2 「PART2 『モテ』と『非モテ』の分断」

現代日本社会において,『下流』の大半は高卒・高校中退の『軽学歴』層なのです。」(同書85頁)

幸福感に関する調査をもとに,(大卒)学歴による『モテ』と『非モテ』の分断を論じています。

我々が実感として持っているけれどいいにくいことを統計やアンケートをもとに論じているパートで,ショッキングながらも,みんなわかってる話でした。

3 「PART3 世界を揺るがす『上級/下級』の分断」

「…こうして先進国のマジョリティは2つの階層に分断されます。イギリスのジャーナリスト,デイヴィッド・グッドハートはこれを『エニウェア族…』と『サムウェア族…』となずけました。

エニウェア族は,仕事があればどこにでも移動して生活ができるひとびとです。地元を離れて大学に進学し,そのまま都市の専門職に就き,進歩的な価値感をみにつけ,成果主義や能力主義に適応しています。グローバル化や欧州統合に賛成し,移民の受け入れや同性婚にも寛容です。

一方,サムウェア族は,中学・高校を出て地元で就職・結婚して子どもを育てているひとたちです。個人の権利よりも地域社会の秩序を重視し,宗教や伝統的な権威を尊重する『ふつうのひとびと』だとされます。

イギリスのブレグジットによって明らかになったエニウェア族とサムウェア族の分断は,現代社会が人種や民族,宗教によって胃分断されているわけではないことを示しています。

知識社会では,ひとびとは『知能』によって分断されるのです。」(同書215から216頁)

「東アジアでは,『日本人』『韓国人』『中国人』などののナショナル・アイデンティティを誇示するひとたちが増えています。

…彼らは互いに憎みあっていますが,ナショナリズム(国)に過剰にこだわる点でとてもよく似ています。

その一方で,…グローバル企業で働く日本人は,国内の『ネトウヨ…』よりも韓国や中国のリベラルなビジネスパーソンに親近感を抱くでしょう。」(同書217頁から218頁)

 

世界的な「分断」に関する本パートです。すごく腑に落ちました。

乱暴に言って,「地元のひととあんまり話が合わないなー」というあの感覚です。

それから,私は以前シンポジウムで韓国の弁護士と話をしたとき,「韓国の上流層は反日感情ってないんだなー」と感じました。あの感覚です。

世界で起きているマジョリティの分断について,1つの説明がなされ,私は身近な感覚として理解できました。

 

出口治明『知的生産術』

【本の紹介】

出口治明『知的生産術』(日本実業出版社・平成31年)

ライフネット生命の創業者の一人で,現立命館アジア太平洋大学学長の出口先生の本です。

出口先生は世界史にも造詣が深く,よく好きで本を買います。この本は主として仕事についての先生の考え方がかかれています。

 

「ビジネス上のイノベーションのほとんどは,既存知の組み合わせです。知識が豊富にあるだけでは,新しいものを生み出すことはできません。

豊富な知識を自分の頭の中でさまざまに組み合わせ,それを外に向けて発信する力(アウトプットする力)がこれからは何よりも求められるのではないでしょうか。

イノベーションは,前述したように既存知の組み合わせですが,『既存知間の距離が遠いほど劇的なイノベーションが生まれる』という法則があります。」(同書56頁)

私は弁護士で,特に知的財産やIT系の法務が好きなんですが,

法律以外のことも含めて知識を涵養することと,「これとこれをこういうふうに掛け合わせたら面白いんじゃないかな」という視点を常に持っていたいと思います。

法律の世界でも,ある分野の視点や理論が別のところで役に立ったりするものです(専門特化にも弊害がある,ともいえます。)。

「そんなばかな!」という突拍子もない組み合わせが,案外革新的なものだったりするんですが,実は昔からあったことだったりもしますね。

 

 

令和元年9月30日追記

「『怒る人間はみんなバカである』…

●人間は必ず①か②のどちらかに入る。

①意欲があってそこそこ賢い人…相手が「意欲があってそこそこ賢い人」の場合は,怒る必要がない。なぜなら,『ここがよくないね』と指摘さえすれば,あとは自力で矯正できるから

②意欲もなく,賢くもない人…相手が「意欲もなく,賢くもない人lの場合も,怒ってはいけない。なぜなら,怒られている理由を理解できず,怒られている事実だけを恨みに思うから。

●相手が①の場合も,②のの場合も,『怒る』という行動は,相手をポジティブに動かすことがない。

●ゆえに,『怒る人間は,みんなばかである』。」(同書233頁)

部下に怒ることの不合理性(損得勘定でマイナス)を説いた個所で,すごく好きです。

『怒らないコツ』では,「感情」でなく「勘定」という言い回しよかったです。

加藤俊徳『脳が知っている 怒らないコツ』

本田健『大富豪からの手紙』

【本の紹介】

少し前の本ですが,いいなと思った箇所をピックアップします。

ストーリー調で読みやすいです。

「『決断にストレスを感じることほど,即決する!』ことです。『決めるのが怖いと思うこと』ほど,すぐい決めてしまうクセをつけることです。決断には『断つ』という字が入っています。」

「…この世界は危険な場所ではなく,素晴らしいところなのですから,『心配していることの90%は,実際には起きない』んです。」同書62頁。

嫌なことは後回しにしがちです。しかし,後回しにした場合の判断と,今の判断と,たぶん結論は変わらないんですよね。

決断のスピードを速くしたいものです。

 

「『自分の才能を使って,仕事で稼ぐ』という方法しかないんだよ。資産と呼べるものを持たなければ,自分で作り出すしかない。そして,売り物は自分『才能しかない』んだ。」

「…『君が持っている中で,いちばんの才能で勝負する』ことが必要なんだ。…『キミが情熱的になれて,寝食を忘れるほど好きなこと』をやらなければ,成功できないんだよ。」同書168頁から169頁。

仕事で大切な2つのことはね,『情熱』と『工夫』なんだ。」同書203頁。

才能を発揮できる分野で,情熱と工夫をこれでもかとつぎ込める,そんな仕事ができる人生は幸せなんでしょう。

私は,得意な知財やIT法務,企業法務の仕事に工夫を凝らしているとき,私はしんどさと楽しさが両立します。

もともと勉強は好きなんですが,そこに顧問先企業の相談という血が通うと,もっと楽しくなります。幸せだなー。

 

「大切なのは,普段から『次のステップは,何か?』を考えておくことだよ。多くの人はね,『次のステップが何かが,わからない』という理由で,今の場所にとどまってしまっている。」同書253頁。

「…キミはどんな人と一緒にいたいだろうか。…簡単に言って,人には2種類いる。それはね,『与える人』と『奪う人』だよ。『与えるんが好きな人』のところには人が集まるし,『奪おうとする人』からはみんな去っていくんだ。」同書290頁。

「島の左近と佐和山の城」という言葉がありますね。

石田三成が家臣の島野左近に,当時の俸禄(年収)の半分である1万石を与えていたことから,優秀な人材を登用することの心得,と私は解釈しています。

もちろんお金に限りませんが,与える人でありたいですね。

橋下徹『実行力』

【本の紹介】

橋下徹『実行力』(PHP新書・令和元年)

最近売れているこの本について,気になった点をコメントします。

1 リーダーの仕事について

「リーダーの仕事は,部下を『やる気』にさせること」

「僕が痛感したのは,『組織は口で言っても動かないが,何かを実現させるとメンバーの意識が劇的に変わる』ということです。今まで『できない』と思っていたことが『できる』という成功体験に変わると,エンジンがかかります。」

「…部下の意識改革をしようとするなら,小さな『改善』だけでゃなく,メンバーに衝撃を与えるようなことを実現させることが必要です。」(同書98頁から99頁)

最近,そういう仕事ができているかなー

…と,胸に手を当てて考えてしまいました。

 

 

2 優れたビジョン

「優れたビジョンは,簡潔で具体的」

トランプ大統領の減税政策について「最初はA4のたった一枚の紙から始まっています。優れたリーダー・トップの方針というものは,簡潔で具体的で,『それがあるからこそ組織が動くことができる』というものです。」

「他方,日本の予算編成でよく出される『メリハリのある予算』『少子高齢化時代の課題に対応できる予算』…などという方針では,組織は大改革に踏み出せません。このような抽象的なスローガンは,ごく当然のことを言っているだけで…」同書126頁

私のお付き合いさせてもらっている,成功している会社の社長は,会社の規模に関わらず,大事にしているものが明確でシンプルだな,と思いました。

 

 

3 トップが欲しい情報,資料

「トップは比較優位がパッと分かる資料が欲しい」

「職員が僕のところに持ってきた書類で,一番ムダだと思ったのは,口頭で説明できることが書いてある書類です。経緯や背景事情について説明文や解説文などは,わざわざ書類に書く必要はありません。それらは口頭で完結に説明してくれれば十分です。」

定性評価で見て,『この観点ならA案が比較優位』『この観点ならB案あが比較優位』ということがきちんと整理してある資料は,いい資料です。」同書185頁から186頁。

もうね,これはすべてのビジネス文書がそうですね。口頭での説明ですら,そうです。

 

背景事情を後回し,という点は我々が裁判所に出す書面もそうです。

例えば訴状では,結論である「請求の趣旨」を冒頭に書いたうえで,結論を導くの骨格である「請求の原因」を,背景事情・経緯たる「関連事実」とを書き分けます。

なぜか,こういうことができる人ばかりじゃないですよね。

 

比較優位という視点は,特に弁護士実務ついて,司法修習でさんざん勉強させられるました。

例えば,「相手方に1000万円を請求する」という目標があるとすと,それを実現する複数の法律構成(法律上の根拠,理由)があって,どの法律構成をとるのが最もよいか,比較優位を検討するわけです。

いわゆる文系の世界では,唯一絶対の正解はなくて,複数のベターな正解から1つを選ばなければいけません。比較優位という視点はとても大事ですね。

野村克也『超二流 天才に勝つ一芸の極め方』

【本の紹介】

野村克也『超二流 天才に勝つ一芸の極め方』

 

 

たまには書評をば。

凡人を自称する同氏による「天才に勝つ」方法論である。

私がこの本で特に心に残ったのは次のところ。

「読者の皆さんの中にも,仕事でいい評価をもらえずにストレスを溜めている人がいるかもしれない。もちろん理不尽な理由で評価されないこともあるだろう。だが,それでも「腐ったら終わり」である

 他人の評価は真の自分の姿を映し出す鏡だと思って,謙虚に仕事に取り組むことを忘れてはいけない。そうすれば,いつか必ずきちんと見てくれる人があらわれて,評価を得られる日が来る。ただ,もし腐って投げやりになってしまえば,上司や周囲からの評価はますます悪くなる一方だし,それが上向くことも永遠にない。

 もしも自分が自分で思っているだけの評価が受けられないと感じているならば,それは甘えが生まれている自分に対する警鐘だと思うべきだ。「謙虚になれよ」と。そこで踏ん張れば,本物の力が必ずついてくる。そして,見ている人からきちんと評価されるようになるはずだ。」(同署83頁)

沁みますね。弁護士という業界にいると,本当に頭のいい人,天才を見ます。いかに自分が凡人であるか思い知らされるわけです。

凡人の弁護士堀尾,腐らず,頑張ります。