2019年8月

比較サイトによる誤認惹起行為ーステマサイト事件・大阪地裁平成31年4月11日判決

大阪地裁平成31年4月11日判決・裁判所web

【事案の概要】

 X及びYはいずれも,外壁塗装リフォーム業者である。
 Yは平成24年1月ころ,ウェブサイト制作業者であるAに対し,口コミサイト(以下「本件サイト」という)の制作を依頼し,本件サイトは平成24年3月5日に公開された。本件サイトでは,Yがランキングの1位と表示されている。
 Xはサーバー管理者に対する発信者情報開示請求,Aに対する訴訟等を経てY自身が本件サイト制作の依頼者であることを特定した。
 そこで,XはYに対し,同業者であるYが,自ら管理・運営する本件サイトにおいて,Yをランキングの1位と表示したことは,Yの提供するサービスの質,内容が全国の外壁塗装業者の中で最も優良であるとして高く評価されているかのような表示をしていた点で,不正競争(役務の質,内容について誤認させるような表示)に該当するとして,不正競争防止法4条に基づき,損害賠償を請求した。弁護士費用等,一部について認容。

【判 旨】

そもそもYへの口コミが虚偽のものである場合,例えば,Yが自ら投稿したものであったり,形式的には施主又は元施主(以下「施主等」という。)からの投稿であったとしても,その意思を反映したものではなかったりなどする場合は,本件サイトの表示上のYへの口コミの件数及び内容をそのままのものとして受け取ることが許されなくなり,その結果,本件ランキング表示とのかい離があるということとなる。
…Yは施主等からの投稿日を変更しようとする作為的な態度を示していたことからすると,Yは,架空の投稿を相当数行うことによって,ランキング1位の表示を作出していたと推認するのが相当である。…以上からすると,本件サイトにおけるYがランキング1位であるという本件ランキング表示は,実際の口コミ件数及び内容に基づくものとの間にかい離があると認められる
「そして,本件サイトが表示するようないわゆる口コミランキングは,投稿者の主観に基づくものではあるが,実際にサービスの提供を受けた不特定多数の施主等の意見が集積されるものである点で,需要者の業者選択に一定の影響を及ぼすものである。したがって,本件サイトにおけるランキングで1位と表示することは,需要者に対し,そのような不特定多数の施主等の意見を集約した結果として,その提供するサービスの質,内容が掲載業者の中で最も優良であると評価されたことを表示する点で,役務の質,内容の表示に当たる。そして,その表示が投稿の実態とかい離があるのであるから,本件ランキング表示は,Yの提供する「役務の質,内容…について誤認させるような表示」に当たると認めるのが相当である。」

【コメント】

(1)需要者(消費者)に対する誤認混同

 今日,商品の販売促進において,インターネット上の口コミが重要であることは周知のとおりです。しかし,本件のようにいわば自作自演のサイトを作ると,同業者から損害賠償請求を受けることがある,という教訓です。また,そのようなサイトを運営すると,別途,景品等表示法違反として消費者庁から措置命令を受けるおそれがあります。

(2)口コミサイトを名誉毀損で戦うことの困難性

 本件では不正競争防止法の誤認混同が認められていますが,Xは名誉毀損も同時に主張していました。

 しかし,口コミはあくまで単なる感想,主観的意見にすぎず,事実の摘示ではないため,なかなか名誉毀損のフィールドでは戦いづらいです。たとえば,飲食店の口コミサイトで「まずい」「おいしくない」と書かれたとしても,「おいしい」かどうかは食べた人の主観的な評価にすぎないため,難しいですね(中には,口コミサイトのランキング下位に記載したことを名誉毀損と認めた裁判例もありますが)。

 翻って,本件の事案で不正競争防止法の誤認混同を主張し,認定を勝ち取った原告代理人は本当にセンスのいい,すばらしい先生だと思います。

パブリシティ権に基づく損害賠償認容例ー「Ritmix」トレーナー事件・大阪高裁平成29年11月16日判決

「Ritmix」トレーナー事件―大阪高裁平成29年11月16日判決・判時2409号

【事案の概要】
 Xは,フィットネスプログラム「Ritmix」を中国,台湾地域で運営する株式会社であり,X代表者の配偶者であるP1は,同地域を担当する Ritmix のマスタートレーナーである。Yは,フィットネス関係の衣料品を製造販売する株式会社である。
 X代表者及びY代表者は,平成26年12月以降,フィットネスウェアを共同して製造販売することなどについて協議した。Yは,P1の写真撮影を行うなどし,Yのウェアを着用したP1の画像をホームページ等に掲載した。また,平成27年2月,アルゼンチンにおいて,P1等が出演して RitmixのDVD撮影が行われ,その際,出演者が着用するウェアとして,YがXと協議して新規に製作したTシャツ及びYの既製品であるズボンが採用された。
 その後,Yは,Xに対し,同年3月25日付け「御通知」と題する書面(以下「本件通知」という。)を送付し,Xとの協議及び取引を終了し,全ての契約締結を見送る旨を伝えた。Yは,その後も,Yのウェアを着用したP1の画像をホームページ等に掲載した。
 Xは,Ritmix のマスタートレーナーのパブリシティ権について独占的な利用許諾を受けるなどしているところ,パブリシティ権侵害等を主張し,Yに対して損害賠償を請求した。一部認容(以下,パブリシティ権に関する判示を引用)。

【判 旨】
「パブリシティ権は,人格権に由来する権利の一内容を構成するもので,一身に専属し,譲渡や相続の対象とならない。しかし,その内容自体に着目すれば,肖像等の商業的価値を抽出,純化させ,名誉権,肖像権,プライバシー等の人格権ないし人格的利益とは切り離されているのであって,パブリシティ権の利用許諾契約は不合理なものであるとはいえず,公序良俗違反となるものではない。
 そして,パブリシティ権の独占的利用許諾を受けた者が現実に市場を独占しているような場合に,第三者が無断で肖像等を利用するときは,同許諾を受けた者は,その分損害を被ることになるから,少なくとも警告等をしてもなお,当該第三者が利用を継続するような場合には,債権侵害としての故意が認められ,同許諾を受けた者との関係でも不法行為が成立するというべきである。」
「…本件において,YとXとの間の協議が継続している間は,YがP1の画像をウェブサイト等に掲載することについて,Xの承諾があったと認められる。しかし,Yが,平成27年3月25日付けの本件通知を送付してXとの協議を終了させたことにより,XのP1の画像の掲載についての承諾も当然に撤回されたものと認めることができる。しかるに,Yは,自ら本件通知をしながら,その後もホームページ等からP1の画像を削除することなく掲載し続けており,それは,P1の肖像等を広告として使用したと評価できるのであるから,Yの行為は,P1のパブリシティ権に係るXの独占的利用権を侵害する不法行為を構成すると認められる」
【コメント】
 最高裁でパブリシティ権が議論されて以来(ピンクレディ事件),パブリシティ権に基づいて損害賠償請求を認容した事例です。インターネット社会が成熟してきた昨今,インターネット上の各種権利の無断利用については,裁判所も厳しい判断をします。芸能人等の写真を無断で利用した場合,(当該芸能人の肖像権侵害とは別に)芸能事務所等から多額の請求を受けることがあるでしょう。