ファイナンスにおける暗号資産(仮想通貨),ブロックチェーンの現在

1 はじめに

 「仮想通貨」と呼ばれていたものが,資金決済法の改正により「暗号資産」に変わります。これ自体は呼び方が変わっただけで,中身が変わるわけではありません。

 (一昔前に「脱法ハーブ」と呼ばれていたものが「危険ドラッグ」に変わっても,その葉っぱの成分は変わりませんよね。)

 しかし,金融商品取引法(以下は単に金商法といいます)の改正と併せて,だいぶこの辺りの業規制が整理されてきたので,特に企業の資金調達との関係で一度まとめておきます。

(以下では,改正後の「暗号資産」という言葉メインに使います)

 

2 ブロックチェーンの過去と未来

 さて,「暗号資産(仮想通貨)」「ブロックチェーン」といえば,多くの方がビットコインをイメージするのではないでしょうか。「暗号資産(仮想通貨)」の代表格であるビットコインはいろいろと話題になりましたね。

 でも,ビットコインを支えるブロックチェーンという技術は,「暗号資産(仮想通貨)」に限らず,様々な用途で実用可能性を秘めたすごい技術,といわれています(インターネットに匹敵する革新的な技術,といわれます。)。

(ちなみに「ブロックチェーン」の基幹にはWinnyで利用されたP2Pという技術があります)

Winny事件・最高裁平成23年12月19日判決

 私が弁護士として大変関心があるのが,「スマートコントラクト」と呼ばれる応用例です。(ざっくり言いますと…)ある契約にブロックチェーンを関連させておいて,ブロックチェーンはプログラムですから,特定の条件が成就するとプログラムに従ってそれ(金銭の移動やペナルティ,執行)が実現する,という話です。

 弁護士は,本当にその契約が契約書通りに実現するのかどうか,いつもハラハラしています。しかし,「スマートコントラクト」によれば,例えば契約の相手方が契約に違反した一定の場合,ペナルティとしてビットコインを自動的にもらえる,契約を強制的に実現する,というような使い方ができそうです。

 企業の資金調達にも応用されています。企業がブロックチェーンを使ってトークンと呼ばれるものを発行して投資家に(電子的に)渡し,投資家は代わりに金銭(暗号資産)を支払う,という構造です。

 

3 ICOの規制→資金決済法

(1)ICOとは

 そのような資金調達の1つに,ICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれるものがあります。

 企業は投資家に対して,物やサービスを利用できる権利等と関連付けたユーティリティトークンと呼ばれるものを発行します。これに対して投資家が金銭(暗号資産)を支払うという構図です。

 企業が独自に暗号資産(仮想通貨)を発行する,というイメージです。企業は株式(=企業の支配権)を発行するのではないので,株式発行に比べて会社の支配権を渡さなくていい,というメリットがあります。投資家としても,発行されたトークン(独自の暗号資産)を売買することができます。

 この方法によって,海外ではものすごい額の資金調達に成功した企業がある,というような話がありました。

(2)ICOの法規制

 そんなICOですが,基本的には資金決済法における「暗号資産交換業」(同法2条6項)にあたりますので,金融庁の登録を受ける必要があります。けっこうハードルが高いようです。

 

4 STOの規制→改正金商法

(1)STOとは

 もう1つ,最近話題なのがSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)と呼ばれる資金調達です。(ここでいう「セキュリティ」は,日本語でいうところの「証券」「株券」のことです。機密性ではありません。

 企業は投資家に対して,自社の株式に相当するセキュリティ・トークンというものを発行し,投資家から資金を調達します。株式ですから,投資家は売買できます。

 STOは自社の株式をブロックチェーンで発行する,というイメージです。普通の株式発行と何がちがうかというと,企業は東証とは別の株式市場に上場できる,ということです。

(2)STOの法規制

 そんなSTOですが,基本的には改正後の金消法の規制対象です。株式の代替であるセキュリティトークンは,基本的には改正後金商法が定義する「電子記録移転権利」(同法改正法案2条3項柱書)にあたり,これは株式と同様金商法に捕捉されます。

 特筆すべきは,自社が投資家に対してSTOをする場合(つまり自社で投資家を勧誘して自社株を発行するのと同じ場合)であっても,原則として第二種金融商品取引業として金融庁の登録を受けなければならない,という点です。(なぜなら,改正後の自己募集の定義規定に含まれないからです。)

 

5 雑感

 規制が厳しく,ビジネスが遅くなってつまらない国だなー,と思う反面,規制の交通整理がなされて投資家の保護には厚くなりました。個人的には,自社で勧誘して,株式の代わりにトークンを発行するSTOくらい,自由にしてもいいじゃないかと思うのですが,このあたりは解釈論で頑張って潜り抜けるか,法改正を待つしかなさそうです。

(ちなみに,金商法の「業として」規制には,対公衆性という要件が必要と解されていて,リスキーですがここの解釈論で戦う余地がないではないのかなと・・・)。

 新しい技術です。以上のように法規制が厳しくなっているところですから,新しいビジネスを始めるにあたり,必ず詳しい弁護士のアドバイスを受けるようにしてくださいね。