2018年11月

マリカー事件・東京地裁平成30年9月27日判決

東京地裁平成30年9月27日判決

(1)事案の概要

 任天堂株式会社(以下「X社」といいます。)は,「平成4年8月27日,ゲーム機種スーパーファミコン用のゲームソフトとして「スーパーマリオカート」を発売し,平成26年5月29日までの間に,合計8本の「マリオカート」シリーズのゲームソフトを販売した。」Y社[1]は,「設立時である平成27年6月4日から,少なくとも平成28年6月23日まで間,MariCAR」との屋号を用いて,公道を走行することが可能なカート…のレンタルとそれに付随する事業…を営んでいた。」Y社はレンタル事業に関するチラシに「『マリカーは,普通免許で運転できる一人乗りの公道カートのレンタル&ツアーサービスです。』」等と記載した。また,「『マリオ』,『ルイージ』,『ヨッシー』,『クッパ』等のコスチュームを着用した従業員が公道カートに乗車して利用者を先導することより,ガイドを勤めていた」り,店舗内入り口付近に「身長120㎝ほどの『マリオ』の人形」が設置されたりした。

 X社はY社に対し,不正競争防止法及び著作権侵害に基づき,差止めと損害賠償を請求した。差止の一部と損害賠償の全額(1000万円)を認容。

(2)判決要旨

「『マリカー』は,①ゲームソフト『マリオカート』の略称として,遅くとも平成8年頃には,ゲーム雑誌において使用されていて…,②少なくとも平成22年頃には,ゲームとは関係性の薄い漫画作品においても何らの注釈を付することなく使用されることがあったこと…,③Y社が設立される前日である平成27年6月3日には,その一日をとってみても,『マリオカート』を『マリカー』との略称で表現するツイートが600以上投稿されたこと…が認められる。また,Y社の設立後においても,テレビ番組においてタレントが,子供の頃から原告のゲームシリーズである『マリオカート』の略称として『マリカー』を使用していたと発言し…,本件訴訟提起に係る報道が出された後には,複数の一般人から,Y社の社名である『マリカー』が原告のゲームシリーズ『マリオカート』を意味するにもかかわらず,Y社が原告から許可を得ていなかったことに驚く内容の投稿がされた事実が認められる…。」

「これらの事実からすると,…マリカーは,広く知られていたゲームシリーズである『マリオカート』を意味する原告の商品等表示として,…遅くとも平成22年頃には,日本全国のゲームに関心を有する者の間で,広く知られていたということができる。」

Y社は,『マリカー』の標準文字からなる本件商標を有しており,『マリカー』という標章を使用する正当な権限を有するから,不競法3条1項に基づく差止請求は認められない旨主張する。しかしながら,Y社が本件商標の登録を出願したのは平成27年5月13日であるところ…その5年程度前である平成22年頃には,既に原告文字表示マリカーは原告の商品を識別するものとして需要者の間に広く知られていたということができる。…原告に対して,Y社が本件商標に係る権利を有すると主張することは権利の濫用として許されないというべきである。」

(3)解説と考察

判決文中にもあるように,「マリカー」はY社の商標として商標登録されており,任天堂は商標登録を阻止できませんでした[2]しかし,Y社が「マリカー」を使用してカートのレンタル事業を営む一定の行為は,不正競争防止法により阻止されました。その意味するところは,商標法と不正競争防止法とは法律の目的が絶妙に異なり,適用範囲も絶妙に違う,ということです。これが本判決の到達点です。

 フランク三浦の商標登録を阻止できなかったフランクミュラーは,不正競争防止法で「フランク三浦」の時計販売を差止められるかもしれません。

フランク三浦事件知財高裁判決・知財高裁平成28年4月12日判決

[1] 「平成27年6月4日の設立時から平成30年3月21日まで,「株式会社マリカー」との商号を用いていたが,同月22日付けで,その商号を「株式会社MARIモビリティ開発」に変更した」

[2] 特許庁・異議2016-900309