メルマガ転載による著作権侵害事件 東京地裁平成30年1月30日判決

東京地裁平成30年1月30日判決
(1)事案の概要
 Xはメールマガジンを配信しているものである。氏名不詳者は,Xのメールマガジンを自身のブログに転載(アップロード)していた。Yは氏名不詳者が利用しているインターネットサービスプロバイダである。
 XはYに対し,氏名不詳者の行為により自身の著作権を侵害されたとして,プロバイダ責任制限法4条1項に基づき,氏名不詳者の住所,氏名等の開示を求める訴えを提起した(請求認容)。

(2)判決要旨
 東京地裁は,Xのメールマガジンが著作物に当たることを認定した上で,次のように判示し,氏名不詳者の著作権侵害を認定した(氏名不詳者の氏名・住所の開示を認めた。)。
「Yは,本件投稿記事における本件引用部分の複製について,本件投稿記事においてはX記事を批評する目的で本件引用部分を引用したものであり,当該引用は公正な慣行に合致し,正当な範囲内で行われたから,適法な引用(著作権法32条1項)に当たると主張する。」
「各本件投稿記事には,いずれも本件利用者が独自に作成したと考えられる部分(以下「独自部分」という。)と本件引用部分があ」る。「独自部分は,特定のURLだけ…,短歌1首と記事の標題だけ…,短歌2首と…紹介文だけ…,短歌1首又は2首だけ…というものが多く,本件利用者によると考えられる批評等が記載されている記事…においても,その批評等はいずれも簡潔なものである。上記のうち,本件利用者によると考えられる批評等が記載されていない本件投稿記事における本件引用部分は,いずれもYが主張する批評目的によるX記事の利用であるとは直ちには認め難い。また,本件利用者によると考えられる批評等の記載がある記事をみても,その批評等は簡潔なもので,独自部分における批評等が本件引用部分全部を批評するものとはいえないし,本件引用部分全部を利用しなければ批評の目的が達成できないものともいえず,批評のために本件引用部分全体を利用する必要があるとは認め難い。仮に,独自部分の短歌に批評の趣旨があるとしても同様である。」

(3)コメント
 本判決のポイントは2つです。まず第1に,プロバイダ責任制限法という法律を使えば,ネット上で,匿名で著作権侵害をしている人を特定できる可能性があるということです。インターネットサービスを提供するプロバイダに対して裁判を起こして,住所・氏名の開示を請求することになります。特定した後は,匿名で投稿している本人に,著作権侵害の損害賠償を請求できます。

 第2に,開示を請求されたプロバイダ側としては,本件のような著作権侵害の場合,「適法な引用です」といって争うことが考えられます。適法な引用といえるためには,批評に必要な部分のみの転載である必要があります(「正当な範囲」といいます。)が,本件のようにメールマガジンの内容をほとんどそのまま引用しているような場合には,著作権侵害になってしまうでしょう。