2018年1月

ヤフオク!におけるクラック版ソフトの出品と著作権侵害・東京地裁平成30年1月30日判決

東京地裁平成30年1月30日判決・裁判所Web・ジュリ1521号8頁
(1)事案の概要
Xは「建築CADソフトウェア「DRA-CAD11」(以下「本件ソフトウェア」といいます。)について著作権及び著作者人格権を有し,また「DRA-CAD」の商標権を有している。Yは,Xの許諾なしに本件ソフトウェアをダウンロード販売すると共に,本件ソフトウェアのアクティベーション機能 を回避するプログラム を顧客に提供していた。XはYに対し,著作権及び著作者人格権の侵害,商標権の侵害,不正競争防止法を根拠に,損害賠償金2812万9500円の一部である1000万円等の支払を求めた。請求一部認容(969万5700円)。

(2)判決要旨
「上記事実によれば,①Yは,ヤフオクにおいて,あくまで「DRA-CAD11」建築設計・製図CAD自体をオークションの対象物と表示して出品しており,「商品説明」欄には「DRA-CAD11」,「注意事項」欄には「ダウンロード品同等」「インストール完了までフルサポートさせて頂きます」,「発送詳細」欄には「ダウロード販売」と記載されていたこと,②かかる表示を見てオークションに入札した顧客も,当然,本件ソフトウェアを安価に入手する意図で入札を行ったと推認できること,③Yは,顧客に対し,本件ソフトウェア及びそのアクティべーション機能を担うプログラムのクラック版(いずれもXの無許諾)のダウンロード先をあえて教示し,かつこれらの起動・実行方法を教示するマニュアル書面を提供し,その結果,顧客が,本件ソフトウェア(無許諾品)を入手した上,本件ソフトウェアで要求されるアクティベーションを回避してこれを実行することができるという結果をもたらしており,Yの上記行為は,かかる結果を発生させるのに不可欠なものであったこと,④Yは,営利目的でかかる行為を行い,…多額の利益を得ていること,以上の事実が認められる。」「これらの事情を総合すれば,上記…の一連の経過により,Yは,本件ソフトウェアの一部にXの許諾なく改変(アクティベーション機能の回避)を加え…,同改変後のものをダウンロード販売したものと評価できるから,Yは,Xの著作権…並びに著作者人格権…権)を侵害したものと評価すべきであり,これに反するYの主張は採用できない。」

(3)コメント
 ソフトウェアには著作権があり,ソフトウェアの販売とはつまるところ著作権のライセンス契約になります。オークションサイトには多数ソフトウェアが出品されており,出品形態もいろいろ です。中には「これ違法じゃないかな?」という出品もあり,本件で見たように違法な場合もあります。
 本判決の意義は,著作権を侵害しているのは(買った人ではなく)ソフトウェアを出品している販売業者だと認定したことです。すなわち,「シリアルナンバー入力を回避しているのは買った人なんだから,うちは関係ありません」という言い訳が立たないことを示したのです。

 この点は,近時のまねきTV事件との関係が注目されます。ばかりか,個人的には,(少し古いですが)ときめきメモリアル事件とも対比検討が熱い事件だと考えています。

⇒まねきTV事件・最高裁平成23年1月18日判決

ときめきメモリアル事件・最高裁平成13年2月13日判決

令和元年10月1日追記

ソフトウェアの改変に関する商標権侵害について,脱獄iPhone事件参照。

脱獄iPhone刑事事件・千葉地裁平成29年5月1日判決

メルマガ転載による著作権侵害事件 東京地裁平成30年1月30日判決

東京地裁平成30年1月30日判決
(1)事案の概要
 Xはメールマガジンを配信しているものである。氏名不詳者は,Xのメールマガジンを自身のブログに転載(アップロード)していた。Yは氏名不詳者が利用しているインターネットサービスプロバイダである。
 XはYに対し,氏名不詳者の行為により自身の著作権を侵害されたとして,プロバイダ責任制限法4条1項に基づき,氏名不詳者の住所,氏名等の開示を求める訴えを提起した(請求認容)。

(2)判決要旨
 東京地裁は,Xのメールマガジンが著作物に当たることを認定した上で,次のように判示し,氏名不詳者の著作権侵害を認定した(氏名不詳者の氏名・住所の開示を認めた。)。
「Yは,本件投稿記事における本件引用部分の複製について,本件投稿記事においてはX記事を批評する目的で本件引用部分を引用したものであり,当該引用は公正な慣行に合致し,正当な範囲内で行われたから,適法な引用(著作権法32条1項)に当たると主張する。」
「各本件投稿記事には,いずれも本件利用者が独自に作成したと考えられる部分(以下「独自部分」という。)と本件引用部分があ」る。「独自部分は,特定のURLだけ…,短歌1首と記事の標題だけ…,短歌2首と…紹介文だけ…,短歌1首又は2首だけ…というものが多く,本件利用者によると考えられる批評等が記載されている記事…においても,その批評等はいずれも簡潔なものである。上記のうち,本件利用者によると考えられる批評等が記載されていない本件投稿記事における本件引用部分は,いずれもYが主張する批評目的によるX記事の利用であるとは直ちには認め難い。また,本件利用者によると考えられる批評等の記載がある記事をみても,その批評等は簡潔なもので,独自部分における批評等が本件引用部分全部を批評するものとはいえないし,本件引用部分全部を利用しなければ批評の目的が達成できないものともいえず,批評のために本件引用部分全体を利用する必要があるとは認め難い。仮に,独自部分の短歌に批評の趣旨があるとしても同様である。」

(3)コメント
 本判決のポイントは2つです。まず第1に,プロバイダ責任制限法という法律を使えば,ネット上で,匿名で著作権侵害をしている人を特定できる可能性があるということです。インターネットサービスを提供するプロバイダに対して裁判を起こして,住所・氏名の開示を請求することになります。特定した後は,匿名で投稿している本人に,著作権侵害の損害賠償を請求できます。

 第2に,開示を請求されたプロバイダ側としては,本件のような著作権侵害の場合,「適法な引用です」といって争うことが考えられます。適法な引用といえるためには,批評に必要な部分のみの転載である必要があります(「正当な範囲」といいます。)が,本件のようにメールマガジンの内容をほとんどそのまま引用しているような場合には,著作権侵害になってしまうでしょう。